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Inside Porsche

70年以上の歴史のなかでポルシェが追求してきた、クルマに対する普遍の哲学。
ジャンルを越えてその哲学に共鳴する2人のクリエイターが
ポルシェを紐解く5つのキーワードで、それぞれのクリエイションを語る。

INSIDE PORSCHE: 02

Taku Obata

Origin

製作の原点にあるのは、
小学生のときに魅了されたブレイクダンス。
その躍動感を永遠にとどめたいと思った。

アーティストの小畑多丘。彼のものづくりの原点はブレイクダンスにある。作品で表現されているのは、B-BOY(ブレイクダンサー)ならではの身体動作や躍動感、感性だ。

小学生で魅了されたブレイクダンスを始めたのは、高校生のとき。当初はそのダイナミックな躍動感を自身が踊って表現していたが、それを永遠にとどめておきたいと、いつしか木彫での表現を試みるようになる。

あえて台座をなくした木彫で表すのは、ダンサー視点の理想のポーズだ。B-BOYのスタイルをベースにしつつ、身体のパーツや衣装を強調したり、重心を微妙に崩したり。人体では再現できない究極の造形を追求する。

動きのあるダンスと動かない彫刻。重心を意識しないと自立しない彫刻と、重力の影響を感じさせるポーズ。「空間という枠のなかで、両極にあるものを一つの造形に存在させたら面白い」。作品づくりの原点にあるのは、そんな視点なのである。

Inspiration

近年はドローイングや映像、写真のような平面作品を精力的に発表するなど、表現の幅を広げている。インスピレーションを求めるのは、自身の思考だ。

「製作を始めた当初は、ただかっこよさを追求していた。続けるうちに、そこに何を表現するのか、空間のなかでそれがどう存在するのかに思いを馳せるようになった」

B-BOYと木彫、作品に通じるテーマについて思索を重ねる中で見出した共通項が、重力と空間、そして動き。すべての作品で描いているのはこの3つの可能性、あるいは限界である。

「重力、空間、動きというテーマを設けることは、作品の外枠をつくること。つまり自分を縛ることになる。アートも思考も、自分に制限を課すことで深化し、さらに発展させることができる」

自身の思考を深めることで新しいものが生まれる。
そのときに必要なのは、自分を縛るもの。
制限がアイデアを深め、発展させるのだ。

「アートも思考も、自分に制限を課すことで深化し、さらに発展させることができる。」
Taku Obata

Expression

表現とはなにかという問いに、小畑は「表現とは、人の本質の現れ」と答える。SNSの発信ひとつにもその人の内面が現れる。それがつまり、表現である。

アーティストが何をしたいのか、作品をどう考え、何を追求したいのか。それはたとえば展示の仕方という、本質とは無関係に思える事柄にも現れるという。

他者の表現で圧倒されたと話すのが、イサムノグチ庭園美術館だ。彫刻庭園にはノグチが山で見つけたという姿のいい石が並んでいる。その遠景には山の稜線がある。石と山、見るものの視界に入るのはただそれだけ。周囲の環境との関係も含め、空間まるごとが作品なのだ。

そんな風に作り手の深い思索を感じる作品に出合うとわくわくする、と小畑。
「誰もわからなくてもいい。自分のテーマだからこだわり続けるし、誰の目にも留まらない細部まで作り込む。それが表現することだと思う」

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誰も気づかないような細部や裏面も作り込む。
表現とは、人間の内面そのもの。
だから徹底的に自己追求する。

What’s Important

彫刻を始めて重心や重力、空間を意識するようになった。さらにそれを突き詰めて、ある真理にたどり着いた。

「木彫は木を削ることで作品ができる。粘土の作品は粘土を盛って造形する。削ると盛る、素材を動かしてその質量を増減させることで作品になる。彫刻とはつまり、ものの移動である」
一方で、ダンスも身体というものの移動だ。身体それ自体が増減することはないけれど、身体を動かしてその全量を移動させるとダンスという表現になる。移動の種類は異なるものの、ものの質量を移動させて作品にするという点で、彫刻もダンスもまったく同じものなのだ。もしかしたら、世界の形あるものは全て、ものの移動でできているのかもしれない。

彼のドローイングは、そんな移動の考え方を平面に取り入れたものだ。はじめに塗料の量を決め、製作途中はこれを足さない。あらかじめ決まった量の素材に手を加えて形を変える。これは彫刻的アプローチの平面作品なのである。

「僕の作品はごくシンプルに見えるかもしれないけれど、実際はシンプルに見えるもののほうが、奥行きが深くて先鋭的で、複雑さを内包している。シンプルであるために、複雑な思考とプロセスを大切にしていきたい」

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作品を貫くのは、複雑な思考のプロセスから生まれた
重力、空間、移動性の探求。
複雑に考え、本質を見つめて造作したら、シンプルに行き着いた。

「B-BOY彫刻という軸はぶらさない。ポルシェのものづくりのように」
Taku Obata

The Future

「重力のない空間で見える造形とは」。ブレイクダンスをきっかけに始まった重力と空間、移動性をめぐる思索の旅は、映像作品に移りつつある。

抽象的な木彫が宙をさまよっているような映像作品は、動くセットのなかで木彫を上に放り投げたり、横に投げ合ったり、落としたり、重力の影響を受ける空間における物体のさまざまな動きを表現したものだ。観るものに、空間と重力を意識させるB-BOYのポーズにも通じる視点といえるだろう。

「B-BOY彫刻という軸をぶらさず、ものづくりの深度を増して進化し続けていきたい。そしていつかは、空間性を意識した映画を撮ってみたい。彫刻家の視点で捉えた空間をどう映像にいかすのか。新しいチャレンジだと思っています」

表現手法をさらに進化させながら、具象(B-BOY)と抽象、重力と無重力、静と動……表裏一体にあるさまざまな事象を見せ続ける。

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自分の原点を守りながら、
未来に向けて常に進化を続けていく。
ポルシェが貫くものづくりのように。

モデル:Taycan 4S

モデルカラー:チェリー メタリック

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INSIDE PORSCHE: 01

Motofumi ‘Poggy’ Kogi

ファッションキュレーター

1976年、北海道出身。ユナイテッドアローズにて「Liquor , woman & tears」、「UNITED ARROWS & SONS」などを手がける。独立後、2019年より、「2G」のファッションキュレーターを務めている。ストリート×クラシックの独自スタイルが身上のファッションアイコン。

Interview

INSIDE PORSCHE: 01

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