■第110回 ポルシェのEfficiency(効率性)
昨年の秋に待望の997型ポルシェ・ターボの後期型がついに登場した。「ポルシェ・ターボは世界最速のスポーツカー」という称号が自他共に与えられてきたが、エコ意識が高まる時代にポルシェ・ターボはどのように生き残っていくのだろうか。
ターボの国際試乗会は昨年末にポルトガルの首都リスボンで行われた。 試乗前のプレゼンテーションではひさしぶりにターボのエンジンが一新された説明を受け、今回のモデルチェンジでは排気量が従来の3.6Lから3.8Lにアップし、パワーとトルクが「20馬力/30N・m」も増していることを知った。
しかし、排気量を高めても燃費を犠牲にしないところがポルシェらしい。環境への配慮は随所にみることができた。500馬力を発生する3.8Lエンジンは全くの新開発。カレラSの3.8Lのフラット6をベースに開発されているが、可変ジオメトリーターボや直噴技術と組み合わせ、欧州モードではCO2排出量が先代のモデルよりも約18%も向上している。
そして待望のデュアルクラッチPDKがターボにも積まれたが、600N・mを超えるトルクに耐えるべくカレラ用のPDKとは中身が異なっていた。新しいエンジンとPDKの組み合わせは、従来のトルコンATのティプトロニックとは違って、さらにダイレクト感に富んだ刺激的な走りが愉しめた。
3.8Lとなったことで低速トルクは大きくなり、エンジンは静かに力強い加速を可能としている。あまりにスムースに加速するそれは、ロケットに跨っているような加速感というよりは、とても高級・上質な加速感といえるだろう。
町中を走行しながら時々燃費計を見るが、100Km走行で12~13Lの消費量であった。つまり平均でもリッター当たり8Kmの燃費換算となる。この値は500馬力を超えるスポーツカーとしては異例のことだろう。ポルシェの開発エンジニアは燃費向上はエンジンだけではなくPDKの採用や、空気抵抗の低減など総合的に取り組んだ結果であると述べていた。
こうした取り組みはターボだけの特権ではなく、すでに直噴化が進んでいるカレラシリーズやボクスター、ケイマン、そしてパナメーラやカイエンにもすでに展開している。つまり環境への配慮はポルシェのスタンダードとなっているのだ。
今回ポルシェは「エストリルサーキットでお楽しみがあるから」と我々を誘惑していた。公道試乗を早々に切り上げて、サーキットに向かった。そこではフルに一日、ターボのパフォーマンスを存分に楽しめた。ガソリンがなくなったら再び満タンにし、タイヤが減ったら新品に取り替え、まるで何かに取り憑かれたようにサーキット走行を愉しんだ。
そう言えば、今回のターボからはGT3で採用された電子制御のダイナミックエンジンマウントが備わり、町中の音振動が低減されただけではなく、ハイスピードのタックインも抑えることに成功している。安全面ではポルシェ トルクベクトリング(PTV)と呼ぶデバイスが新しく採用された。
その仕組みはポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム(PSM)を使ってリヤの内輪に若干ブレーキを介入させることで、アンダーステアを解消するもの。ターボが持つ四駆システムはトラクション性能をつねに高めているが、PTVがアンダーを抑えてくれる。その機能はサーキットを走ることで充分に理解できた。
環境性能と向き合いながら、エモーショナルなドライビングを追い求めることが、ポルシェの進化の方向なのである。
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サーキットレース歴20年の豊富な経験を生かし、実戦経験を基にしたクルマの運動理論では日本の第一人者。
