Porsche

清水和夫がポルシェを語る

■第117回 パナメーラ

パナメーラに待望のV6エンジンが加わった。今回はニューフェースのV6を中心に、パナメーラの世界に足を踏み入れてみたいと思う。

そもそもパナメーラとはどんな車なのか。コンセプトは明快で、911とも勝負できるほどのパフォーマンスとドライビングフィールをサルーンカーで実現する、ということになるのだろう。

エンジンのラインアップを紹介すると、最速のパナメーラはV8ターボと7速PDKと組み合わせるパナメーラ・ターボ。500馬力/トルク700Nmというビッグパワーだが四駆のおかげでトラクション性能は高く、ロケットのように発進する。

0-100Km/h加速はなんと4.2秒。さらにスポーツクロノパッケージを装備するとその速さは4.0秒にまで達する。残念ながら日本では体験しづらいが、最高速度は303Km/hで高級サルーンカーとしては文句なく世界最強だ。

ノンターボのV8は400馬力/トルク500Nmが与えられ、四駆とFRの二つのモデルが用意される。パナメーラ4Sは四駆のトラクション性能を生かして0-100Km/hを5秒(スポーツクロノパッケージ装着時:4.8秒)で加速し、FRのパナメーラSは5.4(同:5.2秒)。

そして、今回ニューフェースとして仲間に加わったV6のパナメーラとパナメーラ4。エンジンはポルシェオリジナル、V8と同じモジュールで設計生産されている。VWトゥアレグとユニットを共有するカイエンのV6とはこの点が異なる。排気量は3.6リッター直噴の自然吸気だが、300馬力/トルク400Nmは立派だ。

もともと自然吸気のエンジンはリッター当たりのトルクでは100Nmが常識だが、ポルシェは3.6リッターで400Nmのトルクを絞り出している。ガソリンエンジンの基本を忠実に煮詰め、圧縮比を高めることで、熱効率が高くなっているのだ。

その結果、パフォーマンスと燃費が両立している。パナメーラの加速性能はPDKで0-100Km/hが6.3秒(同:6.1秒)、パナメーラ4が6.1秒(同:5.9秒)と十分な速さではないか。にもかかわらず、パナメーラ(PDK)の燃費は、10・15モードで、9.7km/L。これはすごい。

ドライバビリティはどうだろうか。V6のパナメーラには全ラインナップで唯一、MTの設定があるが、車としての位置づけを考えると、ポイントはやはりPDKのキャラクターにあるだろう。

冒頭、911と勝負できるほどのサルーンというコンセプトに触れた。だから当然、パナメーラの全てのモデルに素晴らしいダイレクト感が感じられる。ライバルは高級サルーンをいかにスポーティに開発するのか苦労しているが、パナメーラの場合はそんな悩みは皆無だ。

その上で、パナメーラのV8とV6モデルでは、そのキャラクターに少し異なる印象を受けた。実際にV6に乗ってみると低いエンジン回転でもトルクは充分、穏やかに加速する。

V8のようなロケット感が足りない、という印象を持つ人もいるだろうが、パワー不足を感じることは一切ない。高級サルーンという立ち位置を考えれば、むしろV6のほうが合っているともいえる。

清水和夫氏

サーキットレース歴20年の豊富な経験を生かし、実戦経験を基にしたクルマの運動理論では日本の第一人者。