閉じる

株式会社フィールドマネージメント 代表取締役
並木裕太

戦略コンサルティング×クリエイティブを軸に第2ラウンドを駆け抜ける。

「モータースポーツは、一番早く走るという、とてもシンプルなルールです。そのためにチームが一丸となって取り組む。それは仲間とともに真っ直ぐ突き進もうと決めた起業のときの気持ちと通じるものがある」

モータースポーツの魅力を多くの人に伝えたい

株式会社フィールドマネージメントは、2009年の創立以来、ビジネスはもちろん、スポーツやエンターテイメントの世界でも数多くの実績を積み上げてきた。代表を務める並木裕太さんは、欧米に比べて地位の低い日本のコンサルティングファームのあり方に疑問を呈し、組織ではなく経営者に寄り添った提案やサポートをすることで新たな価値をもたらした。今回はコンサル業界の風雲児といわれる彼のバケットリストに注目したい。

彼とポルシェジャパンとのつながりは深く、現在、展開中の「ポルシェインパクト」は彼との会話がきっかけになっているといっても過言ではない。このプロジェクトは走行距離と燃料消費率からCO2排出量を特定し、4つのサポートプログラムの中からオーナー自ら1つを選び、オフセットできるという仕組みだ。サポートプログラムは、日本のエネルギー効率化や再生可能エネルギープロジェクトを支援する「Jクレジット制度」や、ジンバブエ、台湾、中央ベトナムの環境保全に活用される。

「僕のやりたかったことの1つに、Porscheのレーシングチームを持つことがありました。モータースポーツは、誰よりも早く走ることをチーム一丸となって目指す、とてもシンプルなルールです。僕はスプリントチャレンジに参戦して、もっと多くの人にモータースポーツの魅力を知ってもらいたいと思うようになったんです。だから、企業に出向いて“一緒にチャレンジしましょう”とお願いしたのですが、多くの企業から“志や心意気には共感するけど、カーボンオフセットやSDGsはどう考えているの?”と指摘されました。そこで、ポルシェジャパンに“またフィールドマネージメントレーシングとして活動するときは、コンセプトにカーボンオフセットを入れられないか?”と相談したのが始まります。でも、それだけではなく、ポルシェカレラカップ・ジャパン(PCCJ)の2022シーズンでは、おそらく、世界初となるカーボンオフセットを取り入れたレースも行われます」

PCCJは、ポルシェのDNAといえるモータースポーツ活動だ。ポルシェジャパンでは、2022シーズン前の合同テストを含む全7イベント11レースにおいて、平均的な練習走行の距離を算出し、1シーズンに排出するCO₂排出量を「ポルシェインパクト」を通じてオフセットする。もちろん、この取り組みにも彼はパートナーとして活動を共にする。

彼がここまでモータースポーツに力を注ぐのは、レースの面白さもあるが、もう1つ、レースは起業のときのマインドに近いものがあるからだという。

「会社を始めたころは、自分が実現したいことに向かって真っ直ぐに突き進むだけでしたけど、だんだん会社の規模が大きくなっていくとあのときのピュアな気持ちも忘れがちになるし、全力疾走していないなと感じることもある。でも、サーキットに出るとあのときの気持ちの高まりを思い出すんですよ(笑)」

「僕にとってPorscheは”始まり”を感じるクルマ。1日の”始まり”であり、旅の“始まり”、レースの”始まり”なんです。Porscheに乗ると新しいことが始まるような気分になれる」

イマジネーションを働かせることで夢に一歩近づく

彼とPorscheとの出会いは子どものころに遡る。当時、ベルギーで暮らしていた彼は、家族と旅行中、自分たちが乗ったクルマをネイビーのPorscheが追い抜いていくのを見た。そのあまりの格好良さに「いつか、あのクルマに乗る」と思ったそうだ。そして、2014年、ついにその夢を実現する日が来た。

「初めて買ったPorscheは991型の前期型のカレラSでした。後ろからガッと押されるような感覚は、今まで乗ってきたクルマとは全然違いましたね。今でもあのときの感動は覚えています」

その後は991型から992型へと乗り換えたが、同じエンジンにも関わらず、さらに進化を遂げたPorscheの走りに彼の喜びはますます加速していく。

「僕にとってPorscheは”始まり”を感じるクルマ。1日の”始まり”であり、旅の“始まり”、レースの”始まり”なんです。Porscheに乗ると新しいことが始まるような気分になれます」

今、そんな彼に新たな“始まり”が訪れている。これまでさまざまな戦略を練ってきたが、今後はそれらを映像やイベントといったクリエイティブな形でも表現していくという。そのための体制はすでに整っている。あとは走り抜けるだけだ。

「僕にとってはラウンド2というエネルギーを感じています。今後は戦略だけではなく、より多くの作品を作っていきたい。それが今、一番やりたいことですね」

”やりたいこと”はあえて口にせずとも、頭の中にあるだけで行動は変わってくるものだと彼はいう。

「イマジネーションは大事です。僕の911に乗りたいという夢も叶っていますから(笑)。やりたいことを思い浮かべていれば、自然とその方向に向かうし、決断もその方向に導かれる。だから、夢は叶えられるんだと思います」